キリスト教の結婚式では必ず歌われる賛美歌。新郎新婦が入場した後と、新郎新婦が夫婦となった事を牧師様が宣言をした後、基本的には挙式の間に2回歌われる事が多いようです。
よく耳にする賛美歌は以下の3つではないでしょうか。
□ 312番 いつくしみ深き
□ 430番 妹背をちぎる
□ 429番 愛の御神よ
新郎新婦、参列者どちらの立場であっても事前に賛美歌の意味や背景に込められた想いを知ることで、その意義を見いだせるはず。
このページではそれぞれの賛美歌に込められた意味や、背景をご紹介していきます。
312番 いつくしみ深き
結婚式で新郎新婦が入場した後に歌われる定番の賛美歌と言えば「312番 いつくしみ深き」。この曲の副題は「祈祷」と言い、1番最初に歌うのにふさわしいとされており、多くの結婚式で最初の賛美歌として歌われています。メロディーが「星の世界」という唱歌と同じということで耳馴染みの良く、クリスチャンでなくとも聞き覚えのある方も多いのではないでしょうか。
VERSE 1
いつくしみ深き 友なるイエスは
罪つみ咎(とが)憂いうれを 取り去りたもう
こころの嘆きを 包まず述べて
などかは下(おろ)さぬ 負える重荷を
VERSE 2
慈しみ深(ふか)き 友なるイエスは
罪 咎(とが) 憂(うれ)いを 取り去り給(たも)う
心の嘆きを包まず述べて
などかは降(おろ)さぬ 負(お)える重荷を
VERSE 3
慈しみ深き 友なるイエスは
変わらぬ愛もて 導き給う
世の友われらを 棄(す)て去る時も
祈りに応えて 労(いたわ)り給わん
アーメン
VERSE 1
What a friend we have in Jesus, all our sins and griefs to bear!
What a privilege to carry, everything to God in prayer!
Oh what peace we often forfeit
Oh what needless pain we bear
All because we do not carry, everything to God in prayer
VERSE 2
Have we trials and temptations?
Is there trouble anywhere?
We should never be discouraged, take it to the Lord in prayer
Can we find a friend so faithful
who will all our sorrows share?
Jesus knows our every weakness, take it to the Lord in prayer
VERSE 3
Are we weak and heavy laden, cumbered with a load of care?
Precious Savior, still our refuge, take it to the Lord in prayer
Do thy friends despise, forsake thee?
Take it to the Lord in prayer!
In his arms he’ll take and shield thee, thou wilt find a solace there
amen
ちょっと難しい歌詞ですが、現代風に意訳すると理解が深まると思います。
心にある悲しみや嘆きがある時は隠さずイエスに祈り伝えよう。
そうすれば、イエス様はいつでだって背負っている重荷を下ろしてくれ、変わらぬ愛で私たちを慰め導いてくださいます。
また、この詩ができた背景には作詞者のスクライヴェンの悲しい人生が背景にありました。
彼はとても恵まれた家庭に生まれ何不自由なく育ちました。大学卒業後に運命の女性と出会い愛し合い、そして結婚の約束をしたのですが、なんと結婚式の前日にボート事故で彼女は亡くなってしまいます。この出来事に深く悲しみ、絶望の淵に立たされますが、その後イエス・キリストを心から信頼し祈ることでイエスからの慈しみや慰めを得ることで、再び立ち上がることができました。この時の経験や心境を、病に苦しむ母を励ますために贈った詩こそ「いつくしみ深き」なのです。
エピソードだけ聞くと、結婚式に相応しくないような印象も持たれる方もいらっしゃると思います。しかし「婚約者を亡くし、全てを失ったと思った時に、祈る事でイエス様は常に愛と慈悲を持って見守って下さっています。」という気づきがあったことで生まれたこの詩には、無償の愛や無限の愛が込められているのです。
神の名の下に誓いを立てる時の「病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、妻として愛し、敬い、慈しむ事を誓います」という言葉にも通ずるものがありますね。真実の愛はいつだって無償だという事に気付かされます。
この先に待ち構えているあらゆることに備え覚悟し、それでも一緒に生きていく想いを心に留め賛美歌の歌詞を口にしてみてください。より強い実感へ変わっていくはずです。
430番 妹背をちぎる
夫婦の誓いの後の賛美歌はこの「妹背をちぎる」がよく歌われている印象です。特に英語の歌詞を読むと、この賛美歌が結婚式に用いられている理由がよくわかると思います。
VERSE 1
妹背をちぎる 家のうち
わが主もともに いたまいて
父なるかみの 御胸(みむね)になれる
祝いのむしろ 祝しませ
VERSE 2
今しみまえに 立ちならび
むすぶちぎりは かわらじな
八千代も共に 助けいそしみ
まごころつくし 主につかえん
VERSE 3
愛のいしずえ かたく据え
平和のはしら なおく立て
かみのみめぐみ 常に覆えば
さいわい家に たえざらなん
VERSE 4
きよき妹背の まじわりは
なぐさめとわに 尽きせじな
重荷もさちも 共に分かちて
よろこび進め 主のみちに.
アーメン
VERSE 1
There is beauty all around, when there’s love at home.
There is joy in ev’ry sound, when there’s love at home.
Peace and plenty here abide, smiling sweet on ev’ry side.
Time doth softly, sweetly glide, when there’s love at home.
VERSE 2
In the cottage there is joy, when there’s love at home.
Hate and envy ne’er annoy, when there’s love at home.
Roses bloom beneath our feet, all the earth’s a garden sweet,
Making life a bliss complete, when there’s love at home.
VERSE 3
Kindly heaven smiles above, when there’s love at home.
All the world is filled with love, when there’s love at home.
Sweeter sings the brooklet by, brighter beams the azure sky.
amen
タイトルにもある「妹背(いもせ)」とは、夫婦または夫婦の仲を表す古語です。妹背を契る(ちぎる)とは「結婚する」という意味。2番の「八千代も共に 助けいそしみ」は永遠の愛を意味し、まさに結婚式にぴったりの賛美歌です。
原曲は「When There’s Love At Home」。ジョン・マクノートンという作曲家が1860年に作詞・作曲をしています。歌詞は聖句を言い換えたり、祈りのように読んだりしないという点で独自性があります。内容は家に愛がある時、平和と豊かさがあり、人生を至福のものに、果ては地球規模までも幸せに包むという愛に満ち溢れていく幸福と愛が込められているのです。
429番 愛の御神よ
賛美歌429番は結婚式の賛美歌です。(428番~430番の3曲が結婚式の賛美歌)。静かな曲調で、新郎新婦を祝福する言葉が歌詞に込められています。
VERSE 1
愛の御神よ み前に立つ
この妹と背を めぐみ祝し
いとうるわしき 愛のころも
よそわせたまえ とこしなえに
VERSE 2
玉敷く庭も 愛の露の
うるおいなくば など安からん、
伏屋のなかも 愛のひかり
てりかがやかば 楽しみ満たん
VERSE 3
愛の御神よ 世の旅路を
助け合いつつ たどるまにも
愛にてみつる あまつ家に
住まう備えを なさせたまえ
VERSE 1
O love divine and golden,
Mysterious depth and height,
To Thee the world beholden,
Looks up for life and light;
O love divine and gentle,
The blesser and the blest,
Beneath Thy care parental
The world lies down in rest.
VERSE 2
O love divine and tender,
That through our homes dost move,
Veiled in the softened splendor
O holy household love,
A throne without Thy blessing
Were labor without rest,
And cottages possessing
Thy blessedness are blest.
VERSE 3
God bless these hands united;
God bless these hearts made one!
Unsevered and unblighted
May they through life go on,
Here in earth’s home preparing
For the bright home above,
And there forever sharing
Its joy where God is love.
歌詞は新郎新婦を祝福し、愛に溢れた天国へ行くまでの道筋を示しているという事を表しています。もう少し砕けた表現を読む事でより理解が深まるのではないでしょうか。
元は古代ローマ時代の金貨「アウレウス(aureus)」に由来する女性名「AURELIA(オーレリア/アウレリア)」というタイトルがつけられていましたが、後にイギリスの牧師によって新約聖書エペソ人の手紙5章 31-33から引用した歌詞がつけられ、賛美歌429番の原曲「O love divine and golden」として歌われるようになりました。
31「それゆえに、人は父母を離れてその妻と結ばれ、ふたりの者は一体となるべきである」。
32この奥義は大きい。それは、キリストと教会とをさしている。
33いずれにしても、あなたがたは、それぞれ、自分の妻を自分自身のように愛しなさい。妻もまた夫を敬いなさい。
最後に
教会式で歌われる賛美歌には多くの意味が込められています。挙式に参列する両親・親族・友人といった参列者とは、お互いに支え合える存在なはず。お互いのことを祈り思いやるような気持ちを意識しながら歌詞の一言一言に想いを馳せながら賛美歌を歌ってくださいね。
賛美歌の最後には「アーメン」という言葉が添えられるのですが、このアーメンとは、ヘブライ語で「そうなりますように」や「そのとおりです」といった同意や共感などを示す言葉です。
いつまでも記憶に残る大切な思い出となりますように。
アーメン。